「愛猫が高齢になった」「持病の治療で、毎日の投薬や皮下点滴が欠かせない」「インスリンの注射をしなければならない」
大切な家族の一員である愛猫との暮らしは、何物にも代えがたい宝物のような時間ですよね。しかしその一方で、旅行や出張、突然の冠婚葬祭の際に、愛猫を預けられる場所が見つからず、途方に暮れた経験はありませんか?
実際に多くのペットホテルでは、管理上のリスクから、持病を持つ猫や高齢猫の受け入れを断らざるを得ないのが現状です。
こんにちは。犬と猫の救急医療に長年携わっている獣医師です。
救急の現場では、決して適切とは言い切れない環境に預けられたことで体調を崩してしまった子たちを診る機会も少なくありません。だからこそ、飼い主様には「どこに預けるか」を慎重に選んでほしいと強く願っています。
本記事では、獣医師である私が『持病や高齢を理由に、「愛猫を預ける」という選択肢を諦めないでほしい』という想いを込めて、飼い主様が安心して愛猫を預けられるペットホテル選びの具体的なポイントを、専門家の視点から徹底解説します。
この記事を読めば、以下のことがわかります。
- なぜ多くのホテルが持病や高齢の猫を断るのか、その背景
- 獣医師ならば必ず確認する、施設選びの具体的なチェックポイント
- 愛猫の病状をホテルに正しく、かつ効果的に伝える方法
もう「うちの子は持病があるから」「高齢だから」と悩む必要はありません。この記事が、あなたと愛猫にとって最適な選択をするための一助となれば幸いです。
目次
なぜ多くのペットホテルは持病や老猫の受け入れが難しいのか?

まず、なぜ多くの施設が断るケースがあるのか、その理由を知ることから始めましょう。実は、ホテル側にも切実な事情があるのです。
主な理由は以下の3つです。
1. 専門スタッフ(獣医師・動物看護師)の不在
最大の理由は、医療スタッフが常駐していないことです。高齢の猫や持病を持つ猫は、環境の変化というストレスだけで体調が急変することがあります。その際に、専門的な知識と経験を持たないスタッフでは適切な初期対応ができません。万が一の事態を想定すると、安易に受け入れることはできないのです。
2. 個別ケアの難しさ
決められた時間でのインスリン注射、複数の薬の投薬管理、療法食の種類や与え方の指定、食欲や飲水量の細かなチェックなど、特別なケアが必要な猫への対応は、多くの時間と労力を要します。
限られたスタッフ数で多くのペットを同時に見ている施設では、一頭一頭に合わせた適切なケアの提供が難しいのが実情です。
3. 責任とリスクの問題
お預かりするということは、大切なご家族の命を預かるということです。持病を持つ猫や高齢の猫は、健康な猫に比べて何かしらのトラブルのリスクが高いことは自明です。
万が一、お預かり中に体調が悪化したり、最悪の事態に至ってしまったりした場合の責任を負うことができないため、受け入れに慎重にならざるを得ません。
これらの理由から、多くのホテルでは受け入れ基準を設け、安全に管理できる範囲の猫に限定せざるを得ないのが現状なのです。
【獣医師が解説】持病・老猫のペットホテル選びで絶対に確認すべき5つのポイント

では、飼い主様はどのような基準でペットホテルを選べば良いのでしょうか。私が獣医師として「自分の愛猫を預けるなら」という視点で、絶対に確認するべき5つのポイントをリストアップしました。
1. 獣医師が常駐またはすぐに対応可能か
最も重要なポイントです。「獣医師常駐」は最高の安心材料と言えます。体調の細かな変化にすぐに気づき、専門的な判断を下せる存在が常にいることは、何物にも代えがたい価値があります。
「提携病院がある」という施設もありますが、その場合、夜間や休診日に対応できるか、病院までの距離や搬送方法はどうか、といった点まで確認しておくとより安心です。
2. 投薬やインスリン注射などの医療ケアに対応できるか
「投薬OK」とあっても、その範囲は施設によって様々です。口から飲ませるだけなのか、インスリン注射や皮下点滴まで対応可能なのか、具体的なケアの内容を確認しましょう。
特にインスリン注射は、食事とのタイミングが重要です。普段の生活リズムに合わせて、正確な時間に実施してもらえるかは必ず質問してください。
3. 猫に適した環境を提供できるか
猫は環境の変化に非常に敏感な動物です。特に療養中の猫にとっては、ストレスが病状を悪化させる引き金になりかねません。
- 犬の鳴き声や物音が聞こえない、静かで落ち着いた環境か
- 他の猫と接触しない「完全個室」か
- 高齢の猫のために、室温は適切に管理されているか
- 隠れる場所や落ち着けるスペースが用意されているか
こういった猫の習性に配慮した環境づくりができているかを確認しましょう。
4. 緊急時の対応フローが明確になっているか
「もしも」の時にどう動いてくれるのか、具体的な流れを事前に聞いておきましょう。
- 夜間に体調が急変した場合、どのような手順で対応するのか
- 飼い主様への連絡はどのタイミングで、どの手段(電話、メールなど)で行われるのか
- かかりつけの動物病院がある場合、その病院と連携してもらえるのか
明確なルールと体制が整っている施設は、信頼度が高いと言えます。
5. スタッフの猫の扱いや病気の知識は豊富か
スタッフが単なる「動物好き」であることと、「プロフェッショナル」であることは全く違います。猫特有のストレスサイン(耳を伏せる、体を小さくするなど)を読み取れるか、わずかな食欲などの変化に気づけるか、病気に関する基本的な知識を持っているかは非常に重要です。
面談や見学の際に、スタッフの受け答えや猫への接し方を観察し、安心して任せられるかをご自身の目で確かめてください。
【獣医師推奨】うちの子カルテを作成しよう!愛猫の情報を正確に伝える準備

これらのポイントを確認し、信頼できるペットホテルを見つけたら、次はいよいよ準備の段階です。安心して預けるためには、ホテルの質だけでなく、「愛猫の情報をいかに正確に、そして漏れなく伝えるか」という点も非常に重要になります。
そこでおすすめしたいのが、愛猫の情報をまとめた「うちの子カルテ(申し送りシート)」を事前に作成しておくことです。以下の項目を参考に、簡単なメモ書きで構いませんので、ぜひ準備してみてください。
【基本情報】
名前、年齢、性別(去勢・避妊の有無)、猫種、マイクロチップの有無と番号
【性格・普段の様子】
人懐っこい、臆病、攻撃的になることがある(どんな時に?)、隠れるのが好き、普段の生活リズムなど
【健康状態・病歴】
病名(できるかぎり正式な病名)、処方薬(名前・成分、量、回数、時間、与え方)、注射や点滴の量・頻度など
【食事内容】
フードの種類(持参または写真など)、1回の量と回数、おやつの有無、水の飲み方(給水器、お皿など)
【トイレの習慣】
猫砂かペットシートか、排尿・排便の平均回数、便の状態
【かかりつけ動物病院】
病院名、住所、電話番号、休診日
この「うちの子カルテ」を予約時や預ける当日に渡すことで、スタッフは愛猫の状態を迅速かつ正確に把握できます。それは、万が一の事態が発生した際に、よりスムーズで適切な対応に繋がるのです。
猫の持病とホテルで注意すべきこと

ここでは、特に飼い主様からのご相談が多い代表的な持病について、先ほどの「うちの子カルテ」に加えて、特にホテル側に伝えておきたい、あるいは確認しておきたい注意点を解説します。
慢性腎臓病
高齢の猫に非常に多い病気です。ストレスや脱水が症状を悪化させるため、特に注意が必要です。療法食を正確に与えてもらえるかはもちろん、「いつでも新鮮な水が飲めるか」「飲水量をきちんとチェックしてくれるか」「尿量を把握してもらえるか」は重要な確認事項です。
自宅で皮下点滴を行っている場合は、ホテルでも継続してもらえるかを確認しましょう。
糖尿病
インスリン注射と食事の管理が治療の柱となります。食事のタイミングと注射時間が厳密に決まっているため、普段のスケジュール通りに対応してもらえるかが絶対条件です。
また、低血糖発作(ぐったりする、ケイレンするなど)のリスクもあるため、緊急時にブドウ糖の投与など、適切な初期対応ができる知識と準備がある施設を選んでください。
甲状腺機能亢進症や高齢猫など
毎日決まった時間の投薬が欠かせない病気などです。投薬を確実に実施してもらえることはもちろん、多飲多尿や落ち着きのなさといった症状に理解があり、トイレを清潔に保ってくれたり、穏やかに過ごせるよう配慮してくれたりするかも大切なポイントになります。
獣医師が常駐するペットホテルがもたらす、飼い主様と愛猫への本当の価値

獣医師が常駐するペットホテルを選ぶことは、単なる「安心」以上の価値をもたらします。それは、ホテルがただの「お預かり」ではなく、「医療ケアの一環」となることです。
日々の健康チェックは、獣医師の目で行われます。食欲、元気、尿や便の状態といった細かな変化から病状の兆候を早期に発見し、すぐに対応することが可能です。これは、飼い主様がご自宅で行っているケアを、そのままプロが引き継ぐということに他なりません。
そして何より大きな価値は、飼い主様ご自身の心の平穏です。旅行中も「あの子、大丈夫かな…」と常に心配するのではなく、「プロに任せているから大丈夫」と心から安心してご自身の時間を過ごせる。その心の余裕こそが、日々の愛猫との暮らしを、より豊かにしてくれるのではないでしょうか。
よくある質問|老猫・持病猫のペットホテル選び編
老猫や持病のある猫は、ペットホテルに預けても大丈夫?
適切な施設を選べば、老猫や持病猫も預けられます。ただし一般的なペットホテルでは「受入れ不可」とされるケースも多いため、獣医療連携・投薬対応・特別食対応を明記している猫専用ペットホテルを選びましょう。
投薬中の猫を預けられるホテルの探し方は?
公式サイトや予約ページで「投薬対応」「持病猫受入れ可」と明記している施設を選びましょう。見学時に薬名・量・タイミングを伝えて、対応可能か確認しましょう。対応可能であっても、動物病院との連携体制や夜間対応の有無を事前に確認すると安心です。
インスリン注射が必要な猫を預けられますか?
糖尿病でインスリン注射が必要な場合は、対応している猫専用ペットホテルが限られるため、予約前に必ず確認しましょう。指示書、インスリンと注射器、血糖測定器、療法食を必要量+予備で準備し、かかりつけ動物病院の連絡先も伝えておきましょう。
持病のある猫を預ける前に準備すべきことは?
薬と指示書、療法食、かかりつけ動物病院の連絡先、これまでの検査結果、ふだんの生活リズムと体調記録、の5点を事前にホテルと共有しましょう。体調変化時の判断基準、緊急連絡先、受診を依頼したい動物病院も明確に伝えておくと安心です。
老猫・持病猫の預け先選びのポイントは?
①完全個室&ケージレス、②獣医療連携、③投薬・インスリン・皆下点滩対応、④特別食対応、⑤体調モニタリングと毎日の報告、の5点が揃う猫専用ペットホテルを選びましょう。「ねこべや」は老猫・持病猫の預かり実績も多数あり、獣医療連携体制も整っています。
まとめ

持病を持つ愛猫や、シニア期に入った愛猫と暮らす飼い主様にとって、預け先の問題は大きな悩みの種です。しかし、諦める必要は全くありません。
今回ご紹介した5つのポイント、
- 獣医師の存在
- 医療ケアの対応範囲
- 猫に配慮した環境
- 緊急時の対応フロー
- スタッフの専門性
これらを基準に、一軒一軒丁寧に確認すれば、あなたと愛猫にとって最高のパートナーとなるペットホテルは必ず見つかります。
飼い主であるあなたが、愛猫にとって最高の主治医さんです。この記事を参考に、自信を持って最適な選択をしてください。そうすれば、安心して愛猫を預け、ご自身の時間も大切にしながら、愛猫との暮らしをより長く、より豊かに続けていくことができるはずです。
執筆者情報
そーへい@犬猫のお医者さん
・獣医師として19年目(2025年現在)
・うち約10年間を夜間救急医療に専念
・動物保険関連を中心としたインターネット記事の執筆・監修経験あり
・ファイナンシャル・プランニング技能士2級(国家資格)保有