トリミングサロンの開業を考えている方に、これだけは先に伝えておきたいことがあります。
たぶん、これから技術を磨こうとしている方にとっては、あまり聞きたくない話かもしれません。私自身も最初に気づいたときは、正直ちょっとへこみました。
それは、技術が上手ければ、自然と指名やリピートが増えるわけではないということです。
実際に店舗を運営する中で、技術は高いのに指名が少ないスタッフがいる一方、技術的には発展途中でも、多くのお客様から選ばれるスタッフがいました。
その違いは、仕上がりだけでなく、飼い主さまへの接し方や施術中の様子の伝え方にありました。
この記事では、猫専門サロン2店舗、ホテルを含めて20店舗を運営する中で見えてきた、開業後にお客様から選ばれ続けるための接客や伝え方、写真・動画の活用方法を紹介します。
目次
技術が上手いだけでは指名されない理由

トリマーとして技術を磨くことは大切です。しかし、現場では技術が高いスタッフほど、必ず指名やリピートが多いとは限りません。なぜなら、トリマーと飼い主さまでは、仕上がりを見る視点が異なるからです。
ここでは、技術が上手いだけでは指名されない理由について、次の3つに分けて紹介します。
- 一番技術が上手いスタッフが、一番指名されるとは限らない
- 飼い主さまには細かな技術の差が伝わりにくい
- 飼い主さまが見ているのは「うちの子が大切にされたか」
それぞれ順に解説していきます。
一番技術が上手いスタッフが、一番指名されるとは限らない
実際に店舗を運営する中で、技術力の高いトリマーがいる一方、まだ発展途中のスタッフもいました。ところが、指名数やリピート率が高かったのは後者でした。数か月にわたってカルテや予約データ、お客さまの声を確認しても、その傾向は変わりませんでした。
違いは、お迎え時の対応です。リピートされていたスタッフは、
「最初は緊張していましたが、途中から落ち着いていました」
「右の後ろ足だけ少し敏感だったので、おうちでも様子を見てあげてください」
と、その日の猫の様子を具体的に伝えていました。
一方、技術力の高いスタッフは、きれいに仕上げても、施術中の様子まではほとんど伝えていませんでした。
この経験から、技術の高さと、お客様から選ばれることは、必ずしも比例しないとわかりました。
飼い主さまには細かな技術の差が伝わりにくい
トリマーは、ブローの入り方や毛の立ち上がり、カットラインなどから、仕上がりの違いを判断できます。
一方、飼い主さまには、プロが感じる細かな技術の差までは伝わりにくいものです。一定以上きれいに仕上がっていれば、「ふわふわになった」「かわいくなった」と感じることが多いでしょう。
プロが何年もかけて磨いた技術の差が、そのままお客さまの目に映るとは限りません。これが、この仕事の難しさであり、開業前に勘違いしやすい点です。
技術は欠かせませんが、技術を磨くだけで選ばれるとは限りません。
飼い主さまが見ているのは「うちの子が大切にされたか」
飼い主さまが気にしているのは、仕上がりの細かな違いだけではありません。
特に猫の場合、「知らない場所で怖がっていなかったか」「無理をさせられていないか」と、預けている間も不安を感じています。
だからこそ、飼い主さまが見ているのは、「うちの子が大切に扱われたかどうか」です。見えない時間への不安を解消し、「ここなら安心して任せられる」と感じてもらうことこそ、トリミングサロンが提供する大切な価値です。
カットは、その安心を届けるための手段の一つでしかありません。
リピートされるトリマーは第一印象を大切にしている

飼い主さまは、受付での表情や話し方から、「安心して預けられる相手か」を判断しています。第一印象が悪いと、その後の施術や仕上がりまで不安に感じられることもあります。
ここでは、第一印象がリピートに影響する理由を、次の3つに分けて紹介します。
- 最初の対応が悪いと、施術まで疑われてしまう
- 笑顔と丁寧な会話が飼い主さまの不安を減らす
- 話しやすい雰囲気が飼い主さまの本音を引き出す
それぞれ順に解説していきます。
最初の対応が悪いと、施術まで疑われてしまう
受付での挨拶がそっけなかったり、質問への返事がぶっきらぼうだったりすると、飼い主さまは「うちの子にも同じように接しているのでは」と不安になります。一度そう感じられると、どれだけ丁寧に施術し、きれいに仕上げても、すべてが疑いのフィルター越しに見られてしまいます。
反対に、第一印象が良ければ、多少気になる点があっても、「一生懸命やってくれた」と好意的に受け止めてもらいやすくなります。
第一印象は、技術や仕上がりの評価まで左右する大切なポイントです。
笑顔と丁寧な会話が飼い主さまの不安を減らす
飼い主さまが安心して猫を預けるためには、技術だけでなく、トリマーの表情や話し方も大切です。
笑顔で迎え、猫の性格や普段の様子を丁寧に聞くことで、「きちんと向き合ってくれそう」と感じてもらいやすくなります。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、技術を磨く一方で、表情や話し方まで練習する機会はほとんどありません。
だからこそ、笑顔や丁寧な会話がほかのトリマーとの差になり、「次もお願いしたい」と思ってもらえる関係につながります。
話しやすい雰囲気が飼い主さまの本音を引き出す
飼い主さまは、預ける相手を「腕」だけでなく「人」で選んでいます。
話しかけやすい相手だからこそ、「前のサロンで嫌な思いをして…」「足先を触られるのが苦手で…」といった本音を話してもらえます。
こうした情報は、その子に合った施術方法を考えるうえで欠かせません。反対に、話しかけにくい雰囲気では、大切な情報を聞けないまま施術に入ることになります。
飼い主さまの本音を聞けるかどうかが、安心や信頼、次の指名を分けます。
リピートされるトリマーは「見えない時間」を伝えている

飼い主さまは、施術中の猫の様子を見ることができません。だからこそ、その見えない時間をどのように伝えるかが、安心や信頼につながります。
ここでは、施術中の様子を伝えるための工夫について、次の3つに分けて紹介します。
- お迎え時に「見えない時間」を言葉で伝える
- 写真や動画で施術中の様子を見えるようにする
それぞれ順に解説していきます。
お迎え時に「見えない時間」を言葉で伝える
お迎えの際は、仕上がりを見せるだけでなく、施術中に猫がどのように過ごしていたのかも伝えることが大切です。
「お利口でした」だけで終わらせず、「最初は緊張していましたが、途中から落ち着いていました」など、その子ならではの表情や反応を具体的に伝えます。
また、「右の後ろ足だけ少し敏感でした」といった情報は、飼い主さまが自宅でケアするときにも役立ちます。
わずか30秒でも、その日の様子を丁寧に伝えることで、「この子をきちんと見てくれていた」という安心が生まれます。お迎え時の一言が、次の指名やリピートにつながるのです。
写真や動画で施術中の様子を見えるようにする
見えない時間を伝えるには、施術中や施術後の写真・動画を残すことが効果的です。
撮影するのは、仕上がりのビフォーアフターだけではありません。シャンプー中に目を細めている表情や、ブラッシングでゴロゴロと喉を鳴らしている様子など、「どのように過ごしていたか」が伝わる場面を残します。
こうした写真や動画は、施術の報告だけでなく「その子の記録」にもなります。プロが撮影した愛猫の自然な表情は、飼い主さまにとって大切な贈り物です。
見えない時間を形にして渡すことが、安心や信頼につながります。
安心が伝わるサロンづくりも信頼につながる



飼い主さまに安心して猫を預けてもらうためには、接客や技術だけでなく、サロンのつくり方も大切です。施術中の様子が見える環境は、「見せられる仕事をしている」という信頼にもつながります。
ここでは、安心が伝わるサロンづくりについて、次の2つに分けて紹介します。
- 施術の様子が見えることが安心と信頼につながる
- 見られる環境がトリマーの所作も変える
それぞれ順に解説していきます。
施術の様子が見えることが安心と信頼につながる
トリミングサロンの多くは、施術スペースが受付の奥やバックヤードにあります。飼い主さまからすると、扉の向こうで愛猫がどのように過ごしているのかはわかりません。
どれだけ丁寧に施術していても、見えなければ安心は伝わりにくいものです。そこで、施術中の様子が外から見えるサロンづくりを考えました。
猫への接し方や施術中の所作まで隠さず見せることは、「見せられる仕事をしている」という意思表示でもあります。
オープンな環境ではごまかしがききません。だからこそ、飼い主さまがサロンの姿勢を自分の目で確かめられることが、安心や信頼につながります。
見られる環境がトリマーの所作も変える
施術の様子が見られる環境では、トリマー自身も一つひとつの動きを意識するようになります。
猫の抱き方や声のかけ方、道具の扱い方まで、普段なら無意識になりやすい部分にも自然と目が向きます。
見られているから丁寧にするのではなく、丁寧な所作を当たり前にする。その積み重ねが、猫への負担を減らし、サロン全体の施術品質を高めていきます。
オープンな環境は、飼い主さまの安心だけでなく、トリマーの意識や行動を整えることにもつながります。
開業後に選ばれるためには技術以外の学びも必要

トリミングサロンを開業するには、安全に施術できる技術が欠かせません。しかし、開業後にお客さまから選ばれ続けるためには、技術だけでなく、接客や伝え方まで身につけておく必要があります。
ここでは、開業後を見据えて学んでおきたいことについて、次の3つに分けて紹介します。
- 安全に施術するための技術は欠かせない
- 技術が一定水準を超えた後は「伝え方」で差がつく
- ねこべやアカデミーでは開業後を見据えた実践力を学べる
それぞれ順に解説していきます。
安全に施術するための技術は欠かせない
ここまで技術以外の大切さを伝えてきましたが、技術が不要というわけではありません。
ケガを防ぎ、安定した仕上がりを提供するためにも、一定水準の技術は絶対に必要です。特に猫は、保定の仕方一つで強いストレスや事故につながることもあるため、扱い方や施術技術に妥協はできません。
まずは、安全に施術し、安心して任せてもらえる技術を身につけることが、トリマーとしての土台になります。
技術が一定水準を超えた後は「伝え方」で差がつく
トリミングサロンの経営は、新規集客だけでは安定しません。新規のお客さまを1人集めるコストと、一度来店したお客様にリピートしてもらうコストには大きな差があるため、売上を安定させるうえでリピート率は重要です。
実際に、私たちが運営するサロンでは、リピート率90%を実現しています。10人のうち9人が再び利用してくださる計算です。
この数字は、カット技術だけで生まれたものではありません。施術中の様子を言葉で伝え、写真や動画で残すなど、「安心の伝え方」を続けてきた結果です。
技術を磨くだけで終わらず、その価値と安心を飼い主さまに届けることが、開業後も選ばれ続けるためには欠かせません。
ねこべやアカデミーでは開業後を見据えた実践力を学べる
専門学校や日々の練習で技術を磨いているなら、それと同じように「伝える練習」も大切です。
私たちは、猫専門サロン2店舗、ホテルを含めて20店舗を運営する中で、「安心を伝える仕組み」を、どの店舗でも実践できる形にしてきました。
ねこべやアカデミーでは、カット技術と同じ比重で、報告の仕方や写真の撮り方、見せ方まで学べます。技術だけでなく、「安心を伝える力」まで身につけるためです。
目指すのは、施術ができるだけでなく、飼い主さまに安心を届け、開業後も選ばれ続けるトリマーです。
まとめ|リピートされるトリマーは技術と安心の両方を届けている

トリマーとして、安全に施術し、きれいに仕上げる技術は欠かせません。
しかし、開業後に選ばれ続けるためには、技術だけでなく、第一印象や会話、施術中の様子の伝え方も大切です。
飼い主さまが見ているのは、仕上がりだけではありません。「うちの子を大切に扱ってくれた」「ここなら安心して任せられる」と感じられることが、次の指名やリピートにつながります。
ねこべやアカデミーでは、技術と伝え方の両方を学べます。
また、サロンを開業するには、集客や物件選び、開業資金、売上のつくり方など、事前に考えておきたいことがたくさんあります。
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