猫トリマーを目指す中で、「猫が好きでも安全に扱えるようになるのかな」「猫を怖いと感じる自分には向いていないのかな」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
多くのサロンで猫の受け入れが難しいのは、トリマー個人だけの問題ではありません。猫の扱い方や安全な判断を体系的に学べる場所が少ないという、業界全体の課題があります。
ねこべやの原点は、重度の毛玉を抱えた猫の飼い主さまから受けた「何軒も断られていて、そちらも無理でしょうか」という一本の電話です。この言葉をなくすため、猫を受け入れる場所をつくるだけでなく、猫を安全に扱えるトリマーを育て、誇りを持って働き続けられる業界を目指してきました。
この記事では、猫専門サロン2店舗、ホテルを含めて20店舗を運営するねこべやが、猫専門サロンを始めた原点や無麻酔と獣医連携にこだわる理由、アカデミーとフランチャイズを通じて実現したい未来についてお伝えします。
ねこべやが猫専門サロンを始めた原点

ねこべやのサービスや猫への向き合い方は、経営上の計算だけから生まれたものではありません。猫と暮らす一人の飼い主として感じてきたことと、行き場を失った猫と飼い主さまとの出会いが原点にあります。
ここでは、ねこべやが猫専門サロンを始めた背景を、次の3つに分けて紹介します。
- 猫は嘘をつかず信頼を少しずつ積み重ねる
- 一人の飼い主として預けたいと思えるサービスをつくる
- 「そちらも無理でしょうか」という一本の電話が始まりだった
それぞれ順に見ていきましょう。
猫は嘘をつかず信頼を少しずつ積み重ねる
私の家には5匹の猫がいます。猫の魅力を聞かれたとき、私がいつも答えるのは「猫は嘘をつかない」ということです。
気に入らなければ近づかず、怖ければ隠れ、痛ければ怒る。人間の都合に合わせて感情をつくることはありません。だからこそ、自分から膝に乗り、喉を鳴らしてくれたときには、心から信頼してくれていることが伝わります。
猫との信頼は積み立て式です。怖い思いをさせれば大きく減り、日々の小さな誠実さによって少しずつ増えていきます。ごまかしが通用しない猫と向き合う以上、こちらも正直でなければなりません。
この「猫は嘘をつかない」「信頼は少しずつ積み重ねるもの」という考え方が、ねこべやという会社をつくるうえでの原点になっています。
一人の飼い主として預けたいと思えるサービスをつくる
私は、猫の会社を経営する前に、一人の飼い主です。
猫5匹、犬3匹、子ども4人と暮らす我が家の朝は、控えめに言って動物園の開園直後です。ごはんを待つ列や追いかけっこが始まり、その様子を猫たちが高い場所から眺めています。抜け毛の掃除や爪切りの攻防、動物病院の費用、深夜に毛玉を吐く音で目を覚ます生活も、すべて当事者として経験しています。
だからこそ、自分の猫を誰かへ預けるときの落ち着かなさも分かります。「今ごろ怖がっていないか」「落ち着いて過ごせているか」と、預けている間も頭の片隅から離れません。
この気持ちを知らずに、猫を預かるサービスはつくれないと思っています。ねこべやで判断に迷ったときの基準は、自分の猫を安心して預けられるかどうかです。自分が飼い主として預けたいと思えることを、サービスづくりの出発点にしています。
「そちらも無理でしょうか」という一本の電話が始まりだった
ねこべやを始めて間もない頃、年配の飼い主さまから一本の電話がありました。
「長毛の猫なのですが、毛玉がひどくて、何軒も断られています。そちらも無理でしょうか」
忘れられないのは、「そちらも」という言葉です。何度も断られ、今回も受けてもらえないかもしれないと、最初から諦めかけているような声でした。
来店した猫の毛は、フェルトのように固まり、鎧のように体を覆っていました。飼い主さまが何もしていなかったわけではありません。毎日ブラッシングを続けても追いつかず、プロを頼ろうとしても断られていたのです。
毛玉を取り除くと、猫は体を大きく伸ばしました。その姿を見た飼い主さまは、涙を流しながら何度も頭を下げてくださいました。しかし、私が最初に感じたのは、うれしさよりも怒りに近い気持ちでした。
なぜ、この猫と飼い主さまはここまで困らなければならなかったのか。なぜ「そちらも無理でしょうか」と聞かなければならなかったのか。この問いが、断られた猫と飼い主さまの受け皿をつくる、ねこべやの始まりになりました。
「猫お断り」がなくならない業界の構造

猫の施術を断るサロンが多いのは、トリマーに猫への思いがないからではありません。猫を安全に扱うための技術や判断を学ぶ機会が少ないまま、現場へ出ていることが大きな理由です。
ここでは、「猫お断り」がなくならない業界の構造と、ねこべやが猫専門を選んだ理由を、次の3つに分けて解説します。
- 猫を怖いと感じるトリマーを責めることはできない
- 猫の扱い方を体系的に学べる場所が不足している
- 断られた猫と飼い主さまの受け皿になるため猫専門を選んだ
それぞれ順に見ていきましょう。
猫を怖いと感じるトリマーを責めることはできない
猫が好きでも、施術中の猫を怖いと感じることはあります。嫌なことをされれば猫パンチや噛みつきで抵抗し、限界を超えると全力で逃れようとするからです。犬の施術経験が長いトリマーでも、猫の速い反応を読み切れず、けがをすることがあります。
そのため、猫とスタッフの安全を守れる体制がないサロンが、猫の施術を断ること自体は責められません。無理に受け入れ、双方に怖い経験を残すことが正しいとは限らないからです。
これから猫トリマーを目指す方も、「猫が怖い自分には向いていない」と考える必要はありません。怖さを感じるのは、猫の力や施術の危険性を理解しているからこその正常な反応です。
猫の扱い方を体系的に学べる場所が不足している
トリマーを養成するスクールの多くは、犬の施術を中心にカリキュラムを組んでいます。猫について学ぶ時間があっても、実際の猫に触れながら経験を重ねられる場所は、まだ限られています。
猫を安全に施術するには、保定やシャンプーの手順だけでなく、耳やしっぽ、呼吸からサインを読み、続けられる状態か、中止すべきかを判断する力が必要です。シニア猫や持病のある猫への対応も学ばなければなりません。
「猫お断り」は、トリマー個人の努力不足だけで生まれるものではありません。猫を安全に扱う方法を十分に教わらないまま、現場で対応を求められてきた業界の構造にも原因があります。
断られた猫と飼い主さまの受け皿になるため猫専門を選んだ
ねこべやを始めるとき、周囲からは「猫だけでは経営が難しい。犬も受けた方がよい」と言われました。
しかし、私たちが見ていたのは市場全体の大きさではなく、ケアを必要とする猫に対して、受け入れられるサロンがどれだけあるかという点です。長毛猫の毛玉やシニア猫のケアに悩む飼い主さまがいる一方で、猫を扱える店は足りていませんでした。
商売として可能性を感じたことも事実です。それでも猫専門を選んだ一番の理由は、断られ続けた猫と飼い主さまが最初に相談できる場所をつくりたかったからです。
ホテルを含めて20店舗を運営する現在も、「ほかで断られた」という相談はなくなっていません。猫専門という選択は、今も不足している受け皿を一つでも増やすためのものです。
無麻酔の施術と獣医師との連携で猫の安全を守る

無麻酔で猫を施術するには、薬を使わないだけでなく、猫の反応を読み、必要なときに中止できる技術と判断が欠かせません。特にシニア猫や持病のある猫を受け入れるには、トリマーだけで判断を抱え込まない体制も必要です。
ここでは、ねこべやが猫の安全を守るために大切にしていることを、次の3つに分けて解説します。
- ケアが必要なシニア猫ほど麻酔による負担も考える必要がある
- 猫のサインを読み限界が来る前に施術を終える
- トリマーの観察力と獣医師の判断力を組み合わせる
それぞれ順に見ていきましょう。
ケアが必要なシニア猫ほど麻酔による負担も考える必要がある
ねこべやのこだわりの中でも、特に重い意味を持つのが無麻酔での施術です。
年齢を重ねると、自分で十分に毛づくろいできなくなり、毛玉や皮脂汚れのケアを必要とする猫が増えます。一方で、シニア猫は持病を抱えていることもあるため、麻酔を伴う施術では、その子の健康状態に応じた慎重な判断が必要です。
初めて相談される飼い主さまから、「麻酔は、していないですよね?」と聞かれることがあります。その言葉の奥には、ケアを受けさせたい気持ちと、愛猫の体へ負担をかけたくない気持ちの両方があります。
もちろん、麻酔が必要な治療や処置もあり、年齢だけで使用の可否を決められるものではありません。ねこべやが無麻酔での施術に取り組むのは、獣医師による治療とは別に、シニア猫にも状態に応じてケアを続けられる選択肢を用意したいからです。この質問を受けるたびに、その責任の重さに襟を正す思いになります。
猫のサインを読み限界が来る前に施術を終える
無麻酔で施術することは、動く猫を力で押さえ、最後まで仕上げることではありません。猫の反応を観察し、その子が受け入れられる範囲で必要なケアを進めることが大切です。
施術中は、耳やしっぽ、呼吸、体の力の入り方などを確認します。強く抵抗してから対応するのではなく、その前に現れる小さなサインを読み、触れ方や工程、進める速さを調整します。
猫が我慢できる時間には限りがあります。見た目を優先してすべての工程を続けるのではなく、その日に必要なケアから行い、負担が大きくなる前に終える判断が必要です。
続けることが難しければ、途中でも中止する。無麻酔とは、単に麻酔を使わない施術ではなく、猫へ無理をさせないための技術と判断だと考えています。
トリマーの観察力と獣医師の判断力を組み合わせる
猫は痛みや体調不良を表に出しにくく、普段は元気に見えても健康上の問題を抱えていることがあります。そのため、ねこべやでは「今日、この猫を受けられるか」という施術前の判断を大切にしています。
予約時には、年齢や持病、通院歴、当日の体調を確認します。健康面で判断に迷う場合は、集めた情報を獣医師へ共有し、施術を受けられる状態か、注意すべきことは何かを確認します。
トリマーは、猫の様子を間近で観察し、気づいた事実を伝えます。獣医師は、その情報を医療の視点から捉えます。それぞれの専門性を組み合わせることで、トリマーの経験や勘だけに頼らない判断ができます。
獣医師との連携には費用もかかります。しかし、私たちの仕事は、何かが起きたときに対応することだけではありません。何も起きない一日を積み重ねることも、猫と飼い主さまからの信頼を守るために必要な仕事だと考えています。
飼い主さまが求めているのは技術だけではなく安心

猫トリマーを目指すと、技術を磨くことへ意識が向きがちです。しかし、飼い主さまが知りたいのは、仕上がりだけではなく、見えない施術時間に愛猫が大切に扱われていたかどうかです。
ねこべやの写真や報告、外から施術を見られる店舗は、経営の教科書から生まれたものではありません。「自分が飼い主なら、何をしてもらえたら安心できるか」を一つずつ形にしてきました。
ここでは、飼い主さまの安心と信頼につながる取り組みを、次の3つに分けて紹介します。
- 写真と報告で施術中の見えない時間を伝える
- 外から施術を見られる店舗で嘘のつけない環境をつくる
- リピート率90%は積み重ねてきた信頼の結果
それぞれ順に見ていきましょう。
写真と報告で施術中の見えない時間を伝える
店舗を運営する中で、意外なことに気づきました。技術力の高いトリマーよりも、技術はまだ成長途中でも、お迎え時の報告が丁寧なスタッフの方が、リピートにつながることがあったのです。
もちろん、安全に施術する技術が必要ないという意味ではありません。ただ、プロが時間をかけて磨いた細かな技術の差は、飼い主さまには判断しにくいものです。飼い主さまが知りたいのは、「うちの子が大切に扱われていたか」ということでした。
そこで、ねこべやでは施術中や施術後の写真を撮り、お迎えの際にその日の様子を報告しています。落ち着いていた場面や苦手だった工程など、その猫ならではのエピソードも伝えます。
予定していた施術を行わなかった場合も、猫がどのような反応を見せ、なぜ中止や変更を選んだのかまで説明します。仕上がりだけでなく、見えない時間に愛猫へどう向き合ったのかを、写真と言葉で届けることを大切にしています。
外から施術を見られる店舗で嘘のつけない環境をつくる
写真や報告だけでなく、店舗の作りも変えました。ねこべやのサロンでは、施術スペースが外から見える設計を採用しています。飼い主さまから見えない密室ではなく、普段の施術をそのまま見ていただける環境です。
「見せられない仕事はしない」という考え方を、スタッフの意識だけに任せず、店舗の構造として形にしました。猫への触れ方や道具の扱い、スタッフ同士の声かけまで、外から見られることを前提にしています。
雑な仕事をすれば、その様子も見えてしまう環境は、スタッフにとって厳しさがあります。しかし、見られているからこそ一つひとつの所作を見直し、猫へ丁寧に向き合う習慣が身につきます。飼い主さまにとっても、「見せられる仕事をしています」というメッセージになります。
猫が嘘をつかない生き物なら、猫を扱う店も嘘をつけない構造であるべきです。外から見える店舗は、ねこべやがその考え方を形にしたものです。
リピート率90%は積み重ねてきた信頼の結果
ねこべやの猫専門サロンでは、多くのお客様が継続して利用してくださっています。自社集計によるリピート率は90%です。10人のお客様が来店すると、そのうち9人が再び利用してくださいます。
経営面では、広告だけに頼らず店舗を運営できる根拠になる数字です。しかし、その本当の中身は経営用語だけでは表せません。
毎月同じ時間に通い、ふわふわになった愛猫へ「べっぴんさんになったなあ」と声をかける飼い主さまがいます。初回はキャリーの奥で固まっていた猫が、何度目かの来店で自分から出てくるようになり、スタッフから歓声が上がることもあります。
リピート率90%とは、こうした時間の積み重ねです。最初にお伝えしたとおり、猫との関係も飼い主さまとの関係も、日々の小さな誠実さによって少しずつ育っていきます。この数字は、現場のスタッフが積み重ねてきた信頼の残高です。
だから私は、スタッフに「売上を追うな、残高を積め」と伝えています。売上は、積み重ねた信頼の先に生まれるものだと考えているからです。
20店舗の失敗を繰り返さない仕組みに変える

現在のねこべやの仕組みは、最初から完成していたわけではありません。ホテルを含めて20店舗へ広げるまでに経験した失敗を認め、同じことを繰り返さない方法へ変えてきました。
ここでは、ねこべやが失敗とどのように向き合い、改善へつなげているのかを、次の3つに分けて紹介します。
- 物件・教育・報告で経験した失敗を隠さず認める
- 失敗から得た学びをマニュアルやチェックリストに残す
- 成功例だけでなく失敗の一覧も卒業生や加盟者へ渡す
それぞれ順に見ていきましょう。
物件・教育・報告で経験した失敗を隠さず認める
ホテルを含めて20店舗になるまでの道のりは、順調なことばかりではありませんでした。
物件選びで必要な設備を見落とし、開業前に想定外の工事費がかかったことがあります。教育体制が店舗の拡大に追いつかず、店舗ごとにサービスの質がばらついた時期もありました。
施術内容や猫の様子を十分に報告できず、飼い主さまから「言ってくれればよかったのに」とお叱りを受けたこともあります。スタッフへ伝えるべきことを伝えきれず、悔しい別れを経験したことも一度ではありません。
失敗をなかったことにしても、信頼は取り戻せません。大切なのは、起きたことを認め、なぜ起きたのかを見直すことです。ねこべやは完璧な会社ではなく、失敗から学び、昨日より確実に改善できる会社でありたいと考えています。
失敗から得た学びをマニュアルやチェックリストに残す
失敗を反省するだけでは、時間がたったときや担当者が変わったときに、同じことが起こる可能性があります。そこで、原因と改善方法を、誰でも確認できる仕組みとして残します。
報告の不足からはお迎え時に伝える内容を標準化し、予約時のヒアリングやカルテの記入方法も見直しました。物件選びで見落としたことは、開業前のチェックリストへ反映しています。
これらの仕組みは、経営者が最初からすべて設計していたものではありません。失敗して痛い思いをするたびに、二度と同じことを起こさないために形へ変えてきたものです。
ねこべやのマニュアルの一行一行の裏には、だいたい一つずつ、失敗したときの苦い顔があります。
成功例だけでなく失敗の一覧も卒業生や加盟者へ渡す
アカデミーの卒業生やフランチャイズの加盟者へ伝えているのは、うまくいった方法だけではありません。物件選びや教育、飼い主さまへの報告など、20店舗の運営で実際に失敗した事例も共有しています。
成功例だけを知っていても、条件が変われば同じ結果になるとは限りません。一方で、どのような判断で問題が起きたのかを知っていれば、自分の店舗で同じ状況に直面したときに立ち止まれます。
私たちが渡しているのは、成功のレシピというより、失敗の一覧表です。ねこべやがすでに払った授業料を、卒業生や加盟者がもう一度払う必要はないと考えています。
猫と同じようにトリマーも幸せにしたい

断られる猫と飼い主さまをなくすだけでは、ねこべやが目指す未来には届きません。猫を支えるトリマーが、誇りと心の余裕を持って働き続けられる環境も必要です。
ここでは、ねこべやが猫の幸せと同じように、トリマーの働き方を大切にする理由を、次の3つに分けてお伝えします。
- 好きな仕事で心身をすり減らすトリマーをなくしたい
- 猫を扱う技術と判断に正当な価値をつける
- トリマーを大切にする経営が成立することを証明する
それぞれ順に見ていきましょう。
好きな仕事で心身をすり減らすトリマーをなくしたい
トリマーは、「動物が好きなことを仕事にできていいね」と言われます。しかし、実際の仕事は体力を使い、手荒れや腰痛に悩むこともあります。経験を重ねても収入が上がりにくく、技術を身につけた人が心身をすり減らして業界を離れていく現実もあります。
私は経営者として、この構造に本気で怒っています。好きなことを仕事にした人が、好きなことのせいで疲れ果て、続けられなくなる業界に未来はありません。
そして、トリマーの疲れは本人だけの問題ではありません。疲弊した手は硬くなり、心の余裕を失えば、猫の小さな反応を受け止めるための安全な余白も少なくなります。トリマーの幸せと猫の幸せは、きれいごとではなく、施術する手を通してつながっています。
だから、ねこべやの目標は二階建てです。一階は、断られる猫と飼い主さまをなくすこと。二階は、トリマーという仕事を、誇りを持って続けられる職業へ変えることです。
猫を扱う技術と判断に正当な価値をつける
猫のシャンプー料金を見ると、「洗うだけなのに高い」と思われることがあります。しかし、料金の中心を占めているのは、シャンプー剤などの材料費ではありません。
猫のサインを読み、力に頼らず安全に支え、負担が大きくなる前に施術を終える。続けられない状態なら中止を選ぶ。料金には、猫を無事に飼い主さまへお返しするための技術と判断への対価が含まれています。
猫トリマーを目指す方にも、自分が身につける技術の価値を知ってほしいと思います。多くのサロンが受け入れを迷う猫へ向き合えることは、誰にでもできる仕事ではありません。その技術に見合う対価を、堂々と受け取ってよいのです。
必要以上の安売りは、一店舗の利益を減らすだけでなく、猫を扱う技術そのものの価値を下げ、次の世代の待遇にも影響します。技術と判断へ正当な価値をつけることは、トリマーが誇りを持って働き続けられる業界をつくるために必要です。
トリマーを大切にする経営が成立することを証明する
ねこべやが価格競争をせず、スタッフの待遇や教育へ投資しているのは、トリマーを大切にする経営でも事業を続けられることを証明したいからです。
リピート率90%も、無麻酔で猫へ向き合う技術も、断られた猫を受け入れる場所も、経営者一人ではつくれません。毎日現場に立ち、一頭一頭へ向き合うスタッフの手が支えています。
経営者にできるのは、その手が疲弊しない働き方や教育の仕組みを整え、必要な費用を削らないことです。目先の安さだけを優先して、現場へ負担を押しつける経営では、安定したサービスを続けられません。
ねこべやが20店舗を通じて示したいのは、単に「猫専門は儲かる」ということではありません。「トリマーを大切にする経営は成立する」ということです。その実例を、一店舗ずつ積み重ねています。
ねこべやアカデミーで猫を扱えるトリマーを育てる

「猫お断り」をなくすには、受け入れる店舗を増やすだけでなく、猫を安全に扱えるトリマーを育てる必要があります。そのために、現場で培った技術と判断を体系的に学べる場所として、ねこべやアカデミーをつくりました。
ここでは、ねこべやアカデミーで学べることと卒業後の支援を、次の3つに分けて紹介します。
- 現役トリマーと獣医師から技術と安全判断を学ぶ
- 写真・報告・カルテまで飼い主さまの安心につながる方法を学ぶ
- 卒業後も獣医師や店舗運営の専門家へ相談できる
それぞれ順に見ていきましょう。
現役トリマーと獣医師から技術と安全判断を学ぶ
教わっていないことは、できません。猫を安全に扱う方法を学べる場所が足りないなら、自分たちでつくる。ねこべやアカデミーは、その考えから始まりました。
現役トリマーからは、20店舗の現場で標準化してきた無麻酔の施術を学びます。決められた手順を覚えるだけでなく、実際の猫の反応に応じて、なぜ触れ方や進め方を変えるのかを具体的に教わります。
獣医師からは、健康面で判断に迷う事例をもとに、安全を優先するための考え方を学びます。トリマーだけで決められることと、獣医師へ相談すべきことの境界も理解します。
現場の技術と医療の判断を、それぞれの専門家から根拠とともに学ぶ。これが、猫を扱えるトリマーを育てるために、ねこべやアカデミーが妥協しなかった部分です。
写真・報告・カルテまで飼い主さまの安心につながる方法を学ぶ
猫トリマーを目指すと、シャンプーやカットの上達に意識が向きがちです。しかし、施術中に気づいたことを飼い主さまや次の担当者へ伝えられなければ、一頭の仕事を最後まで担うことはできません。
ねこべやアカデミーでは、カットやシャンプーと同じ比重で、写真・報告・カルテについて学びます。猫の様子が伝わる写真の選び方や、観察した内容を飼い主さまへ分かりやすい言葉で届ける方法、次回の施術に役立つ記録の残し方を身につけます。
技術を見せるためではなく、愛猫がどのように過ごしていたかを伝えるために写真と言葉を使う。施術の先にいる飼い主さまの安心まで考えられる猫トリマーを目指します。
卒業後も獣医師や店舗運営の専門家へ相談できる
ねこべやアカデミーでは、卒業をゴールにしていません。現場へ出たり、自分のサロンを開業したりしてから直面する判断を、一人で抱え込ませないことを大切にしています。
たとえば、卒業後に「17歳で心臓に持病があり、ほかのサロンで断られた猫をお願いしたい」と相談されたとします。手元に卒業証書があっても、初めて出会う状況で迷うことはあります。
そのようなときは、健康面について獣医師へ相談し、店舗運営については20店舗を運営してきたチームから助言を受けられます。学んだ内容だけで答えを出せない場面でも、必要な専門家へつながれる体制です。
卒業生の先には、必ず施術を受ける猫がいます。卒業後も相談できる関係を続けることは、卒業生だけでなく、その先にいる猫の安全を守るためにも必要だと考えています。
フランチャイズと仲間の力で受け皿を全国へ増やす

『猫お断り』を全国からなくすには、ねこべやの直営店だけでは足りません。猫と飼い主さまが安心して相談できる場所を、各地域に増やしていく必要があります。
ここでは、ねこべやがフランチャイズに取り組む理由を、次の3つに分けて紹介します。
- 一人で開業する不安を20店舗で培った仕組みで支える
- 猫と飼い主さまへの思いまで共有できる仲間を増やす
- 最初に電話した一軒で相談できる地域を増やす
それぞれ順に見ていきましょう。
一人で開業する不安を20店舗で培った仕組みで支える
一人で店を持つことの怖さを、私は知っています。自分が休めば施術売上が止まること、判断を相談する相手がいないこと、お客様をゼロから集めなければならないこと。こうした不安から、猫を扱える人が独立を諦めてしまうことがあります。
ねこべやのフランチャイズは、この怖さを仕組みで小さくするためのものです。
20店舗で培ってきた店舗運営やリピートの設計、ホテル併設の収益構造、予約・カルテのシステム、獣医師との連携など、一人では最初から用意することが難しい仕組みをまとめて活用できます。
看板だけを使ってもらうのではなく、猫と飼い主さまへ向き合うことに集中できる土台を渡す。猫を扱える人が、開業への不安だけを理由に夢を諦めなくてよい環境をつくりたいと考えています。
猫と飼い主さまへの思いまで共有できる仲間を増やす
フランチャイズと聞くと、店舗数を増やすための拡大戦略や、ロイヤリティを得るための事業を想像する方もいるでしょう。しかし、ねこべやにとってのフランチャイズは、少し意味が違います。
仕組みを渡したいのは、単に猫専門サロンを経営したい人ではありません。断られた猫と飼い主さまを受け入れ、猫の安全と飼い主さまの安心を大切にしたいという思いを共有できる仲間です。
その背景まで理解し、それぞれの地域で実践してもらうことが大切です。
ねこべやにとってのFCは、看板を貸すだけののれん分けではありません。同じ思いを持つ仲間へ、仕組みと考え方を一緒に渡す「思想の分社」だと考えています。
最初に電話した一軒で相談できる地域を増やす
私たちが増やしたいのは、ねこべやの看板の数ではありません。「そちらも無理でしょうか」と言わなくてよい場所の数です。
長毛猫やシニア猫を抱えた飼い主さまが、何軒も電話をかけて疲れ果てることなく、家の近くで相談できる。そのような受け皿を全国に増やしたいと考えています。
その場所が、ねこべやの店舗でも、卒業生のサロンでも、同じ考えに共感してくださった別のサロンでも構いません。最初に電話した一軒から「まず、その子のことを聞かせてください」と返ってくる地域を、一つずつ増やすことが目標です。
まとめ|「猫お断り」のない未来を一店舗・一人・一匹ずつつくっていく

ねこべやは、「そちらも無理でしょうか」という一本の電話から始まりました。断られた猫と飼い主さまが安心して相談でき、猫へ向き合うトリマーが誇りを持って働き続けられる業界をつくることが、私たちの目標です。
ここで、ねこべやを支えてくれているスタッフへ、直接伝えたいことがあります。
いつも、ありがとう。
リピート率90%も、無麻酔で猫へ向き合う施術も、断られた猫の受け皿も、現場で一頭一頭へ向き合うスタッフの手がつくってきたものです。私にできるのは、その手が疲弊しない仕組みと、価値に見合う環境を整えることです。
トリマーが心に余裕を持って働き、その手に触れた猫が安心し、愛猫を受け取った飼い主さまが笑顔になる。その「また来月」がトリマーの誇りになる。この循環を、一店舗、一人、一匹ずつ増やしていきたいと考えています。
10年後、アカデミーの卒業生が全国で自分の店を持ち、シニアの長毛猫を抱えた飼い主さまが、最初に電話した一軒から「まず、その子のことを聞かせてください」と言ってもらえる。私たちが見たいのは、「そちらも無理でしょうか」という、あの声がもうどこからも聞こえてこない世界です。
猫を怖いと感じていても、それだけで猫トリマーを諦める必要はありません。まだ、安全に扱う方法を教わっていないだけかもしれないからです。その技術と安全判断を学べる場所が、ねこべやアカデミーです。猫専門サロンの開業を仕組みから始めたい方には、フランチャイズという道もあります。
猫は嘘をつきません。だから私たちも、嘘のない店と、嘘のない業界をつくっていきます。
ブログでは伝えきれない現場の判断や、猫専門トリマーを目指す方に役立つ実践的な情報をねこべやアカデミー公式LINEで発信しています。
猫トリマーを目指している方や、猫専門サロンの開業を考えている方は、ぜひ登録してみてください。
